再犯とは？/ ディック
[ 546] 平成19年版犯罪白書について −再犯者の実態と対策−
[引用サイト] http://www.moj.go.jp/PRESS/071130-2.html
|
本白書は，７編構成となっています。第１編では，平成18年を中心とする犯罪の動向を，第２編では，検察，裁判，成人矯正及び更生保護の各段階における犯罪者の処遇の実情を，第３編では，外国人犯罪者，暴力団犯罪者，薬物犯罪者等の各種犯罪者の動向と処遇を，第４編では，少年非行の動向と非行少年の処遇を，第５編では，統計上の犯罪被害と刑事司法における被害者への配慮を，第６編では，司法制度改革の主な事項の概要と進捗状況を，それぞれ紹介し，第７編では，「再犯者の実態と対策」と題して特集を組んでいます。 再犯の防止は，刑事政策上の重要かつ困難な課題の一つであるところ，近年，刑務所出所者等による重大再犯事件が相次いで発生するなどしたため，有効な再犯防止対策の確立が社会的関心事となっており，刑事司法の分野では，様々な新たな取組が行われています。 このような状況を踏まえ，本白書は，特集として刑事政策上の重要課題である再犯防止の問題を取り上げることとし，主として，犯歴・統計資料の分析により，再犯者対策の重要性や近時の再犯の傾向を示すとともに，再犯者について，罪名，年齢等の様々な視点からその実態を概観し，さらに，殺人の再犯事犯について特別調査を行い，その動機・原因，被害者との関係等を見ることにより，その特徴について考察しています。また，検察・裁判，矯正及び更生保護の各分野，さらには，諸機関の連携によるものとして，現在採られている再犯防止対策について紹介しています。そして，最後に，これらの分析・調査等を踏まえて，再犯防止対策を検討・研究するに当たり特に考慮すべき若干の点について述べ，今後の再犯防止対策の視点となるものの提示を試みています。 100万人の犯歴を対象として総犯歴数別の人員構成比を見ると，初犯者が71.1％を占めているのに対して，再犯者は28.9％にとどまっています。ところが，総犯歴数別の犯歴の件数構成比を見ると，初犯者による犯歴の件数は42.3％にとどまっているのに対して，再犯者による犯歴の件数は57.7％を占めています。このことは，約30％の再犯者によって，過半数である約60％の犯罪が行われていることを示しており，ここに刑事政策として再犯者対策が重要であることの根拠があります。 その年に確定した再犯事件において，どのような罪名が多いのかを知るため，再犯の罪名別犯歴の件数構成比の推移（最近30年間）を見ると，自由刑（懲役，禁錮又は拘留）においては，窃盗，覚せい剤取締法違反，傷害の比率が高く，財産刑（罰金又は科料）においては，傷害，暴行の比率が高くなっていました。 次に，経年による再犯状況の罪名別の変化を知るため，初犯者の５年以内再犯率を罪名別に見ると，各年次ともに，窃盗及び覚せい剤取締法違反の５年以内再犯率が高くなっていました。平成７年と12年との比較では，恐喝と詐欺の５年以内再犯率の悪化が目立っています。また，初犯者の５年以内再犯率を年齢層別に見ると，12年の初犯者の５年以内再犯率は，20歳代を除くすべての年齢層において他の三つの年次（昭和60年，平成２年，７年）より高く，特に40歳代を中心にその傾向が顕著であることが注目されます。 20歳代前半で１犯目の犯罪を犯した者の41.0％が，その後再犯に及んでおり，他の年齢層に比べて，１犯目の犯罪を犯した者が２犯目以降を犯す比率が高いことが分かりました。また，この年齢層は再犯に至る者のうち約47％が２年以内の期間に再犯を犯しています。 他方，65歳以上の者については，初犯者の５年以内の再犯率が上昇傾向にある上，近年，特に犯歴の件数が10犯以上の再犯者において占める比率が急速に高まっていることから，その対策が重要になっています。 平成18年における新受刑者を初入者と再入者別に比較すると，犯時無職であった者の比率は，窃盗，傷害・暴行，覚せい剤取締法違反のいずれにおいても再入者の方が高く，中でも，窃盗の再入者においてその比率が81.4％と特に高いことが分かりました。 １犯目が性犯罪（強姦，強制わいせつ及び強盗強姦をいいます。）であった者のうち，30.0％がその後再犯に及んでいますが，再犯の中に性犯罪を含んでいる者は5.1％にとどまっています。もっとも，この中には性犯罪を多数回繰り返す者も存在しています。 刑事施設で受刑している殺人（ここでは強盗殺人を含みます。）再犯者128人を抽出して調査しました。 初度の殺人事犯と再度の殺人事犯について，犯行の動機・原因（憤まん・激情，暴力団の勢力争い，報復・怨恨等），被害者との関係（暴力団員，知人，面識のない者等），殺害手段（斬・刺殺，絞・扼殺，射殺等）等を比較すると，初度と再度とで多くの類似点が見られました。 検察・裁判においては，捜査・公判を適切に運用することを通じて，寛厳よろしきを得た適正な科刑を実現することが再犯の防止に資することとなります。また，近時，事案の実態に即した適正な処罰を可能とするため，処罰範囲や法定刑を変更する各種の立法がなされています。 刑事施設では，職業訓練を実施しているほか，義務教育が未修了である者等に対して，学校教育法に基づく学校教育に準じた指導を行っています。また，平成18年度から全国の指定刑事施設で性犯罪再犯防止指導を実施し，対象者が性犯罪者処遇プログラムを受講しています。 更生保護においては，保護観察の充実強化のため，他者に危害を加えるおそれが高く，その処遇上最も配慮を要する者について，保護観察官が直接的関与を強めるなど集中的・継続的な指導監督・補導援護を実施すること等をし，その再犯防止を図っているほか，今般制定された更生保護法では，性犯罪者処遇プログラムを始めとする専門的処遇プログラムの受講や面接及び生活実態の申告が義務化されるなど，保護観察の充実強化を進めています。 法務省と厚生労働省は，受刑者や保護観察対象者等の就労を確保し，その改善更生を図るため，刑務所出所者等総合的就労支援対策を平成18年度から開始しています。 平成19年度からは，法務省と文部科学省が連携し，刑事施設及び少年院に収容され，高等学校卒業学歴を有しない者に，改善更生と円滑な社会復帰に資するため，高等学校卒業程度認定試験（旧大検）を，これら施設内において実施しています。 平成17年６月から13歳未満の子どもを対象とする暴力的性犯罪等に係る受刑者の，同年９月から殺人，強盗等の重大な犯罪等をした受刑者の出所情報の警察への提供も開始されています。 再犯者の実態に基づき，再犯防止対策を検討するに当たり特に留意すべきと思われる点としては，�―虍伴圓�２犯目の犯罪に至るのを防止すること，�⊆稠�者の再犯防止対策がより重要であること，��罪名・罪種の特質に応じた対策を講ずる必要があること，�げ昭疂�等社会内処遇を充実強化することが挙げられます。再犯者の実態は個々の特性によって様々であり，したがって，これに対する有効な対策も，これらの特質に応じて，重点的・集中的に行われなければなりません。 さらに，再犯防止の実効性を高めるには，多岐にわたる犯罪の要因を突き止め，これらの多面的・複合的な要因に対し，包括的かつ継続的な対策（指導監督及び支援）を行うことが不可欠です。刑事司法機関においては，それぞれが再犯防止という刑事政策上の目的を強く意識し，相互に連携して職務を遂行すること，さらには，関係する機関・組織，民間団体，個人等とも密接に連携することが望まれます。また，犯罪を犯した者の多くがいずれ地域社会に戻ってくること等に照らせば，犯罪者の更生に対する国民や地域社会の理解を促進していくことも重要です。 |
ディックのサイトです。
